連絡れす!

 >さしみ様
例の夢の中の話なんですが、ラストはえらい長くなってしまいそうです。
ここから先は物凄く怖いシーンだったので、頭の中に良く残っているんですよ。
ですから、少しずつ書いて小出しにしていきます。


ということで、第6話をどうぞ......。





「保田さん。申し訳ないんですが、死んでもらえませんか?」



紺野のその言葉に、保田はその瞳を大きく見開いた......。



「フフフ、保田さん、もしかして怖がってます?」


紺野はそう言いながら、手に持ったナイフをより強く保田の顔に押し付ける。


(い、痛い!)


保田は自分の顔を切られたと思った。
実際にはナイフの腹の部分が当たっているだけなのだが、そのナイフから伝わって来る冷気と紺野が見つめる冷たい視線とで、保田は 「切られた」 という錯覚を起していた。


「ねえ、保田さーん。」


紺野がいつもの “フニャー” っとした笑顔を見せた。
保田はその笑顔の黒目の多い瞳を見つめる。
と同時に、変な感覚に襲われ始めた。


(ああ、吸い込まれそう......。)


紺野の大きな瞳の漆黒の部分。
その闇の中へと自分が引き込まれて行くようだった。


(ああ、どうしよう。やばい......。)


保田は意識が飛びそうになる。
しかし寸でのところで踏み止まった。


「こ、紺野!」
「はい、何ですか保田さん。」
「 『何ですか』 じゃないよ! あんた、何するつもりなの? 冗談も程々にしないと、あたし本気で怒るよ!」


口が自由に動くようになった保田の怒鳴り声に、紺野は眉毛を “ハ” の字にして困った顔になる。


「えー、冗談じゃないですよ? マジで保田さんに死んでもらうんです。」
「あんた......。ほ、本気なの?」
「ええ、何か不都合でも?」


紺野は立ち上がると 「よいしょ」 と言いながらベッドの上に上がってきた。
保田は何とかして逃げようとするが、紺野に飲まされた薬のせいで全く手足を動かす事ができない。


抵抗する為に上体を揺らしている保田の肩を、紺野は片手で軽々と押さえてしまう。
そして、仰向けのままの保田の腰の上に馬乗りになった。


「ああ、なんかヤバイなぁ......。私、Sっ気があるかも?」
「え?」
「保田さんの怯えている顔を見ていると、なんかゾクゾクしてきちゃうんです。」
「こ、紺野......。」


今までの紺野からは想像も付かない “妖艶” 且つ “冷酷” な笑顔を見せる姿に、保田は背筋が凍る思いがした。


しかし、自分に残っている最大限の力を振り絞り、保田は強気な笑顔を作って紺野に言う。


「あんたさあ、そんな事を言って、実はそのナイフ偽物なんでしょう?」
「え? 保田さん信じてくれないんですかぁ? しょうがないなあ......。」


突然、紺野は自分の人差し指をナイフの刃に当てた。
保田にはただ当てただけに見えたが、紺野がまたちょっと “困った顔” になると、刃と指の間から赤い鮮血が滲み出てきた。
紺野はその指を保田の顔の上に持ってくる。


「保田さん? これで信じてくれますか?」


そう言うか言わないかの間に、紺野の血が保田の顔へと滴り落ちた。


(ひっ! ヤバイ、この子狂ってる!)


保田が再び怯える表情をすると、紺野は不敵な笑みを見せる。
そして、保田の顔の上に滴り落ちた血の雫を、その指で顔中に広げ始めた。


その紺野の姿に、保田は恐怖心が最高潮に達して歯がガタガタと震え始める。


「ああ、保田さん......。その怯えた顔も、とても素敵ですよ?」




ここまで来て、保田はやっと理解した。
自分の中で理解できたその答えを、自分でも驚く程に落ち着いた声で紺野に向けて言う......。




「あたし、やっぱりあんたに殺されるんだね?」


「はい。やっと理解して頂けたようですね、保田さん!」




紺野は、再び “フニャー” っとした笑顔を見せた........。