連絡れす!

可愛いんです!(川平慈英風に)

 >さしみ様
とりあえず、まだ恥ずかしくない部分だけアップします。
夢の中のこの部分も、俺は圭ちゃんの立場・視点でした。
こ、紺野さん、怖いよう......。






(あ、あれ?)


保田が眠りから目覚めた。
眠りに落ちる前に感じていた紺野の体のぬくもりが無く、視線を送ると紺野はベッドの脇の椅子に座ったまま眠っていた。



(ああ、紺野って眠っている時の顔も可愛いなあ......。)



体が斜めになり背もたれから落ちそうな紺野の横顔を見て、保田はそんな事を思っていた。
しかしすぐに、眠りに落ちる寸前に見た紺野の顔を思い出す。



(あれは何だったんだろう。夢だったのかな?)



保田は紺野の声を掛けようとベッドから起き上がろうとした。
しかしその時、自分の体の異変に気付く。



(あ、あれ? 体が動かない......。)



まるで自分の腕や足に鉄球の錘でも付けられたかの様に、全くそれを動かす事ができない。
動かす事ができるのは顔のみで、あとはわずかに上体を傾ける事ができるだけ。



(え、うそ、これって金縛り?)



急に怖くなった保田は紺野に声を掛ける。


「こ、こ、こん.......こんの......。」



(こ、声も出ない!)



声さえも出にくくなっている自分の状況に、保田の顔には脂汗が出てきた。




その時、紺野が目を覚ました。


「あ、保田さん、起きちゃいました?」
「こ、こん...の。あたし...体が...おかしい...の。」
「あ、体動かなくなりました?」
「う、うん。どう...しよう。これ...夢...じゃないよね?」


そんな保田の問いかけに、紺野はいたって冷静に答える。


「夢じゃないですよ、保田さん。ちゃんと起きてますよ。」
「あ、そう。ねえ...紺野? あんた、あたし...が...冗談を...言ってると...思ってるでしょ?」
「え? いや、そんなこと思っていませんよ? 大丈夫ですよ、そのうち言葉の方はしゃべりやすくなって来ますから。」


そう紺野が笑顔で答えると、保田は紺野の言葉に違和感を感じた。



(あれ? 何で紺野は 「あたしの体が動かなくなった」 って事を知っているんだ? それに 「大丈夫ですよ」 って.....。)



保田は精一杯の力を込めて、ベッドの上の体を紺野の方に向ける。


「あれ? 保田さん、上半身は動くんですか?」
「う、ううん。腕は...動か...ないの......。ねえ、紺野? 何であんた...あたしの...体が......動かないって...分かったの?」
「え? 何でって......。」


そこまで言うと、紺野は不敵な笑みを浮かべて椅子から立ち上がる。
そしてベッドの脇にひざまずき、保田の顔に近づいて言った。


「だって、体が動けなくなる薬を保田さんに飲ませたんですもん。」


笑顔でそう言う紺野の声色は、保田が今まで聞いた事の無い様な、何か冷たいものを含んだものだった。
そこで初めて保田が気付く。


「あんた...まさか、寝る前に...くれた...あの薬......。」
「あ、気付きました? そうですよ。あれ、二日酔にならない薬なんかじゃなかったんですよ?」
「あんた、騙した...のね?」
「はい、そうですよ。」


その言葉に怒りを覚えて、保田は紺野に掴みかかろうとするが腕が全く動かない。
それを見て、紺野は冷たい笑顔を保田に向ける。


「あははは、保田さん無理ですよ。かなり効き目の強い薬ですから。あ、ちょっと待ってて下さいね。」


紺野はコップを持ってバスルームへと向かう。そして水を一杯持って来た。


「これ、飲んで下さい。」
「ちょっと、あんた......。今度は何の毒を...飲ませる気なの!?」
「あ、ひどいなあ保田さん。これ、只の水ですよ? さ、飲んで!」
「や、やめて!」


口が動く保田は抵抗するが、紺野に無理やりに飲まされてしまう。


「保田さん、心配しないで下さい。これで幾らか話しやすくなりますから。」




しばらくむせていた保田だが、やがて落ち着きを取り戻した。


「どうやら、大丈夫...みたいね。」
「だから言ったじゃないですか、只の水だって。」


保田は体を部屋の天井に向けて、視線を紺野から外すと静かに言った。


「ねえ、紺野。何であたしに...こんな事するの?」
「えー、何でって......。」
「あたしに飲ませた...こんなヤバイ薬、普通...手に入らないでしょ。何でそこまでして...あたしを......。」


保田のその言葉に、紺野は黙り込んでしまう。
しかし紺野は何かを決めたかの様な表情をして、やがて口を開いた。


「話せば、長くなるんですけど......。保田さんに、居なくなってもらいたいなあ、って思いまして......。」
「え? 居なくなって...もらいたい?」
「はい......。」


保田は驚きの表情で顔を紺野の方に向ける。
すると、紺野は側にあった自分の鞄から何かを取り出した。


保田の目に映ったそれは、青光りするどこか冷たい光を湛えている。
そしてそれがナイフである事を保田が理解した時、紺野はそれを保田の顔にあてて言った。



「保田さん。申し訳ないんですが、死んでもらえませんか?」



紺野のその言葉に、保田はその瞳を大きく見開いた......。