連絡れす!

 >さしみ様
遅くなりました。第4回目です。
かなり記憶があやふやになって来ているんで、脚色でカバーしてあります。
ちなみに今回も、俺は圭ちゃん視点です。


ではどうぞ。

それから一時間ぐらいだろうか。
保田と紺野はとりとめもなく色々な事を話していた。




保田がモーニング娘。に入った時の事。
紺野がモーニング娘。に入った時の事。


モーニング娘。での仕事の思い出。
仕事を離れた、プライベートでの思い出。


保田が卒業した時の心境。
紺野がこれから卒業するに当たっての心境。


保田が思い描く、これからの自分の姿......。
紺野が思い描く、これからの自分の姿......。




紺野の話を聞きながら、ふと保田は思った。


(あれ? 紺野って、こんなにしゃべる子だったっけかなあ......?)




「そうなんですよ。もちろん東京にもそんな大学があるんですけど、やっぱり地元・北海道の大学の方がいいかなって思ったんです。」
「そうだよねえ。北海道は酪農が盛んだしね。やっぱり獣医さんになるならその方がいいのかな?」
「はい。実習のカリキュラムとかも凄いんですよ!」
「へええ。でもアンタ、ますます 『モーニング・タウン』 のお話と一緒になってきたよね?」
「へへへ、そうなっちゃいますね。」




(ああ、この子も大人になった。って事なのかなあ?)


紺野の夢を語る姿が頼もしく見えてきて、保田は親心のように嬉しくなった。




そんな保田であったが、急に眠気を覚えたようだ。


「ねえ、紺野。悪いんだけど、アタシなんだか眠くなってきちゃったんだ。明日朝早いし、そろそろお開きにしない?」
「あ、はい......。ごめんなさい、私、何だかしゃべり過ぎちゃって......。」
「う、うん、いいの。スゴイ楽しかったよ、紺野とこんなに話せて。」
「私も楽しかったです。ホントに良かったです。もう保田さんとお話出来なくなっちゃうかなあ、って思っていたんで......。」


紺野は寂しそうに俯いてしまう。


「あーもー、紺野! またいつでも会えるでしょ! その “なんとか検定試験” が終わったら。」
「あ、はい......。」


保田は優しく紺野の頭を抱き寄せた。


「紺野、今日ここに泊まっていきなよ。」
「え? いいんですか?」
「うん。ほら、うちのマネージャーさんね、急用で帰っちゃってベッドが空いているから。」
「え、本当に? ありがとうございます!」
「フヘヘヘ。だから、ほら、アンタもシャワー浴びてきな。」
「はい、ありがとうございます。あ、でも私、着替え持って来てないや......。」
「いいじゃん。アンタ、明日お休みなんでしょ?」
「あ、そうか......。じゃ、これ借りますね。」


そう言った紺野は、もう一つのベッドの上にあったバスタオルや浴衣を持ってバスルームへと向かう。
と、突然立ち止まって保田の方を振り返ると、悪戯な視線を向けて紺野は言った。


「あ、もしかして私、石川さんみたいに保田さんに食べられちゃうんですか?」


そんな言葉に、保田は顔を真っ赤にして反論をする。


「コ、コラ、紺野! アンタまだ、ごっつぁんが言った事を信じてんの!?」
「へへへへ、コワーイ! 食べられちゃうぅぅ!」
「もう、紺野!」
「ゴ、ゴメンなさーい!」


「まったくもう、紺野はいつからあんな子になっちゃったの!?」


バスルームへと向かう紺野の後ろ姿を見ながら、保田がブツブツと呟いた......。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



紺野がバスルームから戻って来ると、保田はベッドの中でうとうととしていた。


「保田さーん、寝ちゃったんですかぁ?」
「あ、いや、ゴメン、起きてるよ......。」


保田はゴソゴソとベッドから起き上がる。
紺野は自分のバッグの中を覗き込むと、何やら薬みたいな物を出して来た。


「保田さん。実はこれ、二日酔にならない薬なんですよ。飲んでみます?」
「え、本当? 実はあたし今日、何だかお酒に飲まれちゃっているみたいなんだよねえ。」
「えー。そうなんですか? そんな酷くは見えませんけど......。」
「いや、だって、いつもはそんな事無いんだけど、今日は何だか眠くなっちゃったしね。」


眠い目をこすりながら保田が言う。


「じゃあ、ちょうど良かった。飲んで下さいよ。」


紺野がコップに水を汲んでくると、保田はそれを薬と一緒に飲み干した。


「ありがとうね、紺野。」
「いえいえ、どういたしまして。」




そう言った紺野は、保田のベッドの脇にひざまずく。


「保田さ〜ん。最後のお願いなんですけどぉ、私、保田さんと一緒に寝たいんです。」


そんな紺野の “上目遣い作戦” に保田はたじろぐ。


「ちょ、ちょっと、紺野? 何言ってんのアンタ!?」
「え、だって、こんなの最後のチャンスかもしれないと思って......。」
「チャ、チャンスって、アンタ......。」


考え込む保田であったが、紺野のその作戦に見事に嵌ってしまったようだ。


「もう! ほら、入ってきな!」
「あ、ありがとうございますー!」


招き入れたところに紺野が飛び込む。


「紺野、あったかいね......。」
「あ、お風呂から出たてだからですかね?」
「そうだねえ......。出たてだもんねえ.......。」


保田は、また睡魔に襲われ始めた。


「保田さん、眠いですか?」
「う、うん......。大丈夫......。」
「眠そうですね。もう寝ましょう?」
「う、うん.......。」




紺野が、ベッドサイトのライトだけを残して部屋の電気を消す。


保田は瞼が重くなってくるのを感じながら、顔を紺野の方に向けた。
紺野が保田の顔のすぐ側で “フニャー” とした笑顔を作る。


「おやすみなさい、保田さん。」
「うん。おやすみ......紺野......。」




(あ、あれ、紺野?)




いよいよ瞼の重さに耐えられなくなってきた保田が、紺野の顔の変化に気付いた。


「おやすみなさい、保田さん......。」


もう一度そう言った紺野の顔には、先ほどの優しい笑顔は無かった。




(え、どうしたの? 紺野?)




冷たい目で保田を見ている紺野。
その瞳の奥に、保田は何か恐ろしいものを見た。


いつもの紺野からは想像もつかない、悪魔の魂のようなもの。


それが何であるかを考える時間も与えて貰えずに、
保田は深い眠りへと落ちていった......。